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Rating:
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Category:
Fandoms:
Relationship:
Characters:
Additional Tags:
Language:
日本語
Stats:
Published:
2024-09-06
Words:
1,276
Chapters:
1/1
Kudos:
5
Hits:
425

decaf

Summary:

好きになりました

Work Text:

 おれ自身には幾分安易なところもあって、遊ぶ分にはバカの方が都合がよかった。主題の二人が見出した真実の愛(ever lover)があったなら、星がおれにも舞ったなら、相手はきっと学も地位も理性もある細い眼鏡をかけた男であるだろう。なので、いくらか愛に興じたところで今は何にもならないことは互いに承知しているとばかり、若い肉体を持って思っていた。
彼には何度となく話してみたが、理解されないことだともわかっていた。おれはおれの傲慢さで、非を感じないように立ち振る舞う。尊重する人間は人生でひとりいればいいと、言うほどに対面したベビー・ブロンドの彼は「それは自分ではないのか」と、訴える視線を寄越す。
「ないね。絶対にない」おれが言うと、彼はすぐにでも眉を下げてしまう。
「どうして? 嫌いになったか?」
「と、いうよりも最初からそのつもりがないんだよ。ないとこ掘っても無意味」
彼はトッドといって、姓までは覚えていなかった。覚えていてもよかったが、それまでの人間に倣うのならおれは覚えないでいていいと感じていた。トッドはおれのことをウォレスと呼んで、ソファの前に屈むと体躯を押し縮めこちらを見つめた。「メガネかける」トッドが言った。おれは断って、自分の分のコーヒーを淹れにキッチンへ立ち去った。
トッドの部屋はその名声(詳しくない)にそぐわず、東部の立地も踏まえてみても豪邸には満たず豪奢にもないが、それなりに趣味の良く広さはあった。女遊びの激しい男だったと、実際に聞いてはいないが察しは付いた。ベッドルームだけが趣味を取り払われ、サテンのシーツの上にロール状のバスタオルが重ねておいてあり、常にハウスキーパーの整えるままにしてあった。強いていえば入口の上部にディスキディアが垂れているのが彼のあらわれ程度だ。
床いっぱいにボヘミアン調のラグが敷かれ、廊下伝いにリビングと、カウンターを挟んでのキッチン。イスタンブールへの憧憬が窺える本棚が鎮座するのは書斎にも物置にもなっていない部屋、私物はひとところに押し込まれている。インテリアのものもちはいいが、事物に興味がある男には見えない。
「イスタンブールは西洋語の発音(prontoion)、イスタンブルのほうが音が正しい」トッドは言うが、発音(pronunciation)の発音さえ怪しいので困る。正しいからなんだというんだか。ちなみにディスキディアは育てやすいらしい。植物の世話もできて素敵なんて簡単に思わないこと。
勝手にカフェラテをこしらえてカウンター越しにトッドを見た。彼はあのまま床にへたり込んで、両腕を座面にあずけ顔を伏せていた。丸まった背中にカップをのせて手を離した。暖に気付いても、動くこともましてや話すこともできないだろう。息遣いを整えて、ただおれが次に助けてくれることを待つしかない。「待て」トッドを放って寝室へ入りシーツの乱れた上に胡坐をかいた。「なあ! 一緒にねよう」返事はなかったが、がり、と僅かに爪で皮をひっかく音がした。
すぐにでも来てくれたら、おれはやっぱり笑えてきてしまうんだろう。愉快だった。来なければ、寂しく感じるのかもしれない。言いつけどおりが一番いいが、けれどバカではないと、遊ぶことができない。そして体だけを信じるように生きてきたウィメンは、どうも目元を覆うのがもったいないのだ。手持ち無沙汰になる前になにか決断がいる。おれが下すべきなのだろうね。